DeFi史上最大の戦争「Curve War」を改めておさらい

CurveのガバナンストークンCRVを巡る戦い「Curve War」について改めておさらいです。
あどまん 2022.04.13
誰でも

先日Kudasaiで開催されたSirius FinanceのAMAに参加した際に多くの方が有名な「Curve War」を知らなかったので、改めてCurve WarというDeFiの教科書に載るべき事案について分かりやすくおさらいできればと思います。

Curve Warとは?

Curve Warはソフトペッグ系トークンに特化したAMMプロトコル「Curve Finance」のトークン$CRVの分配権を巡って、あらゆるプロジェクトがCRVを奪い合う戦いを「Curve War」と呼んでいます。

ちなみにソフトペッグというのはUSDT-DAIやETH-stETHのような1:1でトークンの価格がほぼ変わらないもの同士のことを指し、Curveはこのような同じ価格のペアでの取引に特化したAMMです。

Curve Warについてお話する前に、前提となるCurve Financeを知っておかないとちんぷんかんぷんになるため、先にCurveについて解説します。

今回の主役「Curve Finance」とは?

Curveはソフトペッグ系トークンに特化したAMMで、低スリップページでステーブルコイン同士での取引が出来たり、リワードなどのインセンティブ設計が優れていることが特徴です。現在、CurveのTVLは約210億ドルなのでDeFiにおけるAAVEと並ぶ代表的なプロトコルの一つです。

例えば、UniswapでUSDCとDAIを取引する場合、USDCを一度ETHに交換した上で、ETHをDAIに交換するという二度手間が発生します。ステーブルコイン同士の取引時では必ずスリッページが発生しますが、Curveはほぼ同じ価値を持つトークン同士をほぼスリップページなしで取引することができます。

現在ステーブルコインを発行しているプロジェクトは多数存在しており、USDCやDAIを始め、FRAXやMIM、SPELL等が挙げられます。豊富な流動性と低スリップページを提供しているCurveに流動性を追加できれば、発行するステーブルコインの流動性が増えるため、各ステーブルコイン発行母体はこのCurveに流動性を追加することがある種、目標にすべき一つの指標でもあります。

どのステーブルコインでも流動性追加できるわけではない。

Curveの肝はまさにここで、UniswapやPancakeはどんなトークンでも勝手に流動性を提供することができるのに対し、Curveはガバナンストークン$CRVの保有者によるガバナンス投票を通さないと、新たにプールを作成することができません。

なぜCurve Warが起きたの?

本題に戻りますが、なぜCurve Warが起きたのか。

ポイントは4点です。

  • ステーブルの流動性を追加するにはガバナンス投票を通して採用される必要がある

  • 報酬のボーナスを貰うためにもガバナンス投票を通して採用される必要がある

  • 取引手数料の配当権利を貰いたいから

  • CurveがソフトペッグAMMとして不動の地位を築いているから

これがCurve Warの発生要因となります。

Curveの流動性に自社の発行するステーブルコインを追加するためにはCRVを集めてガバナンス投票を経て勝ち取らなければなりません。

Curveはガバナンストークンである$CRVを一定期間ロックすることでveCRVを獲得することができ、このveCRVを保有することで、

  • DAOの投票権利

  • 流動性提供者に最大2.5倍のブースト

  • 取引手数料の内50%の配当権利 

これらのインセンティブが貰えるので、各プロトコルは必死で$CRVを集めるように動くことになりました。

ちなみに、CurveではCRVのロック期間に応じて投票権やブーストの倍率が変動し、1年間ロックすると1CRVに対して0.25veCRV、4年の場合は1veCRV獲得することができます。

また、CurveはPoolに応じてCRVの報酬が異なります。報酬となるCRVをどのPoolに優先して付与するかどうかもガバナンス投票によって決定するため、各Poolを提供している流動性提供者はボーナスを最大化するために投票権を確保しなければなりません。

例えば、USDN +3Crvの流動性提供者にはBase APY11.07%に加えて、ボーナスとして12.64%も貰うことができます。

このボーナスや投票券を最大まで貰うためにはCRVを4年もロックしなければならないため、多くのユーザーは頭を抱えていました。なぜなら4年は果てしないから。

そんな中、その悩みを解消してくれる伝説のプロジェクトが誕生しました。

Convex Financeの誕生

DeFiの世界は目まぐるしく半年、1年単位でトレンドが発生することからCRVを4年もロックすることは非効率的でリスクが伴います。

そこで誕生したのがConvex Financeというプロジェクトです。Convexの最大の特徴は、Curveの運用において、veCRVを持っていなくてもブーストされた状態で運用できることです。

どういうことでしょうか?

まず前提として、Convexに出てくるトークンは以下5種類が存在します。

  • CRV:Curveのガバナンストークンで、CurveでLPトークンを預けると貰える。

  • CVX:Convexのガバナンストークンで、CurveのLPトークンを”Convex”で預けると貰える。

  • veCRV:CRVをロックした時にもらえるトークン。ロック期間が長いほどたくさん貰える。

  • 3CRV:Curveで3poolに預けた時に貰えるLPトークン。

  • cvxCRV:ConvexでCRVをcvxCRVにコンバートすると貰えるトークン。
    cvxCRVをConvexにステーキングすると3CRV,CRV,CVXが貰える。

非常に複雑なので頭がこんがらがるかもしれませんが一度整理しましょう。

本来Curveで投票券やブーストを貰うためには最大4年間ロックしなければ貰えないことは上述した通りです。しかし、ConvexにCRVをステーキングすると”ロックなし”でCurveのステーキングと同等の権利が貰えます。また、追加でConvexのガバナンストークン$CVXも貰うことができます。

であればわざわざCurveにロックする必要性が無くなるため、Convexを利用するユーザーが急増する結果になりました。

結果的にConvexは発行されているCRVを50%以上保有することなり、Curveのガバナンス投票はConvexが圧倒的に有利な状況となりました。つまり、Curveにステーブルコインの流動性を追加したいプロジェクトは、Convexでガバナンスを通すためにCVXも大量に保有する必要が出てきました。

Curveの決定権を握るConvexの決定権を握るために、CRVとCVXの両方を集める必要があるということです。複雑ぅー!!

今度はConvex Financeを集めるプロジェクトが続出

上述したように、Curveにおける多大な影響力をもったConvex Financeでも影響力を持つ必要性が出たことによって、今後はCurveだけでなく、CVXを集めようとする動きが起こりました。

CRVはもちろんのこと、CVXも大量に保有しておくことでDeFiの王「Curve」を自分の都合の良いように仕向けることができることができるため、各プロトコルはCRV/CVXを集める動きを取り始めました。

その代表となるプロジェクトがOlympusDAOやWonderland、Alchemix、KeeperDAO等が挙げられます。これらはCVXをトレジャリーで蓄積するタイプのプロジェクトです。

結果的にConvexにも大量の資金が入ることになり、現在はTVL135億ドルを超えており、CompoundやSushiSwapを超えて6位となっています。

また、yearnのような各有名DeFiプロトコルもこぞってcvxCRVに対して高APYのインセンティブを付与することによってCRV/CVXを集める動きが活発になりました。
※cvxCRVはConvexでCRVをcvxCRVにコンバートすると貰えるトークン。

ちなみにYearnはConvexよりも前にCRVを集めるために動いたプロジェクトで、veCRVをラップしてyveCRVとして運用できるようにしていましたが、Convexの存在感があまりにデカ過ぎたので上記箇所では割愛しています。

Curve Warは複雑だが覚えておくべき事象

以上がCurve Warの一連の流れでした。

「Curve」を聞いたことはあるものの、ここまで影響力があると思ってた方は少ないのではないでしょうか。ステーブルコインはいかにCurveに流動性を追加できるかが鍵となり、その決定権はveCRV(CRVをロックすると貰えるトークン)の保有数に応じて決まります。

そして、最大4年のロックをしなくてもCurveのステーキングと同等の効力を持つConvexの台頭等CRVを巡る戦いは壮大なものでした。

この先、このCurve Warほどインパクトのある事象はなかなか発生しないかもしれませんが、他チェーンでも同様の事象が発生する可能性はあるため、Curve Warを理解しておいて損はないかと思います。

もし「DeFiの教科書」が存在したら間違いなく紹介される話になるでしょう。

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