日本発ステーブルコイン「UXD」の仕組みを改めて学ぼう

デルタニュートラルポジションをトークン化することでステーブルコインを発行するプロジェクト「UXD Protocol」についての紹介。
あどまん 2022.04.19
誰でも

UXD Protocolとは?

UXD ProtocolはSolana上に展開される分散型ステーブルコインのプロジェクトです。 

2020年Soteriaという名前で立ち上がったプロジェクトで、UXDにリブランディングされました。

2021年11月には、ガバナンストークン「UXP」のIDOが行われ、1月にはメインネットが実施、現在はRaydiumやOrcaに上場しています。また、こちらのUXD Protocolは稲見建人さんという日本人がCEO兼Founderを務めており、日本発となるステーブルコインプロジェクトです。

デルタニュートラルポジションをトークン化している

ステーブルコインには必ず裏付けとなる資産が必要です。

例えば、USDTだと

  • 75.85%:現金及び現金等貨物、その他の短期預金、コマーシャルペーパー

  • 12.55%:担保貸付金

  • 9.96%:社債、ファンド、貴金属

  • 1.64%:その他(デジタルトークンを含む)

このような割合でUSDや担保貸付金など裏付けとなる資産を保有しており、DAIはETH等が裏付け資産としてMakerDAOから発行されているように、全てのステーブルコインには裏付け資産が必ず必要です。

それでは、UXD Protocolはどのようなロジックで裏付けされているのでしょうか。

UXDはオンチェーンの無期限先物(Perpetual / PERP)を使用して、デルタニュートラルポジションを作成し、ポジションのドル価値に比例して発行されるため、ポジション自体が裏付けされています。

担保となる資産(SOLやBTCなど)を保有すると同時に、同じ資産を先物取引でショートします。このプロトコルは、同一資産のロングポジションとそれに対応するショートポジションを保有しており、資産自体の価格変動には一切影響を受けません。このようなポジションはデルタニュートラルと呼ばれ、資産の価格変動に関わらず、ドル建てで見ると同じ価格を維持しています。このポジションをトークン化し、ステーブルコインを作っています。

わかりやすく説明すると
①デルタニュートラルポジションをデリバティブDEX(Mango Marketなど)を使って組む
②デルタニュートラルポジションを価値の担保にしたドルペッグトークンを作る
③ドルと連動しつつ、金利(ファンディングレート)も得られるトークンの完成
といった流れです。

要はデルタニュートラルポジション=常に損益がゼロ=同価格=ステーブルコインにできるのでは?といった発想が基になっています。

もっと細かく仕組みを解説

UXDを鋳造するために、ユーザーは担保となる資金をUXDのスマートコントラクトに預けることで、SolanaのデリバティブDEX(最初はMango Markets)でデルタニュートラルポジションを作ります。

例えば、ユーザーがSOLをコントラクトに預け入れた場合、UXD ProtocolはそのSOLを受け取り、DEXでデルタニュートラルポジションを作ります。現物のSOLをロング、先物のSOLをショートして、ドル建てで常に安定した価値を持つヘッジされたポジションを作ります。

SOLの価格が100$だとして、ユーザーが1SOLをコントラクトに預けると、コントラクトは100UXDをユーザーに対して鋳造します。

また裏のコントラクトでは、SOLを使用してMango Marketsにてデルタニュートラルポジションを作ります。このプロトコルでは、1SOLを担保として保有すると同時に1SOLのショートポジションを作ります。SOLの価格変動に対するリスクはなく、このポジションの価値は常に100ドルとなります。そして、このポジションは鋳造した100UXDの裏付けになります。

ユーザーは100UXDをコントラクトに戻し、ポジションをクローズすると、DEXにおけるポジションが解消され、ユーザーは100ドル相当のSOLを返還されます。

ポジションがオープンしている間にSOLの価格が下落した場合、ユーザーは最初に入金した金額よりも多くのSOLを返還されることになりますが、SOLの価格が上昇した場合、ユーザーは入金した時よりも少ないSOLを返還されることになります。ただし、いずれの場合も、ユーザーが返還される担保はユーザーが預けたときのドル建てと同じ価格となります。

無期限先物にはファンディングレートと呼ばれるメカニズムが使われている。

ファンディングレートとは、無期限先物取引価格と現物取引価格の差に基づいて、ロングまたはショートのトレーダーに定期的に支払われるものです。

FRについては以前ブログで紹介しているので知らない方はぜひ読んでください。

UXD Protocolはファンディングレートによって、プロトコルの保険基金を継続的に確保しています。ファンディングレートがマイナスになった場合、プロトコルがファンディングレートを支払う必要がありますが、この費用はプロトコルの保険基金から引き出されるため、UXDホルダーが支払う必要はありません。

UXDプロトコルの保険基金は、トークンセール(IDO)によって確保されており、ファンディングレートがプラスになり、プロトコルの収益性を確立したあとは、その一部を保険基金に回し持続的に保険基金を確保しています。

資金効率・分散性・安定性の3要素を兼ね備えるステーブルコイン

他のステーブルコインと比べて、どういうところが特徴的か説明します。まず前提として、ステーブルコインにおける重要な要素である、「資産効率・分散性・安定性」が備わっています。

それぞれどう重要かと言うと

資金効率
UXDは過剰担保に依存しないため、MakerDAOのような分散型ステーブルコインよりも資本効率が高くなっています。

UXD Protocolに入金された100ドル分のSOLまたはBTCは、ちょうど100UXDを生み出します。この効率は、トークンが1対1で担保されるUSDCのような中央集権的なシステムに匹敵します。例えば、MakerDAOのようなシステムでは、預けられた担保の何%かしかステーブルコインを発行できません。なぜなら担保となる資産の価格変動が大きいため、余力を残しておかなければ担保不足となってしまうからです。

一方、UXDは、USDC、USDTといった中央集権型ステーブルコインと同様に担保が1対1となっているため、資本効率が高いです。また、担保を利用しない、あるいは部分的に担保を利用する「アルゴリズム型」のステーブルコインにつきものの固有のリスクを回避することもできます。

分散型
中央集権型ステーブルコインは非常に高い規制リスクを抱えています。新たな法律が制定された場合、禁止、ホワイトリスト、またはその実用性に大きな影響を与える変更が行われる可能性があります。もし中央集権型ステーブルコインの発行会社に対して大きな規制措置が取られた場合は、UXDのような分散型のステーブルコインには大きな追い風となります。

UXDは完全にオンチェーンで存在し、仲介者を必要としません。UXDは検閲に強く、検証可能、監査可能で、単一障害点がありません。

MakerやFRAXなどの他の分散型ステーブルコインは、USDCのような中央集権的な資産に大きく支えられていますが、UXDはそのような資産を裏付けにしていないため、影響を受けない設計となっているところも優れています。

復元力のある安定性
ほとんどのステーブルコインは、ステーブルコインの価値を裏付けるために担保資産に依存しています。その多くは、基礎となる担保の大きな価格変動からステーブルコインを保護するために、過剰な担保を必要とします。担保資産の価値が急激に変動した場合、ステーブルコインは担保不足となり、ペッグが外れてしまう可能性があります。純粋にアルゴリズムに依存した(つまり裏付けのない)ステーブルコインは現在存在せず、今後も実現しない可能性があります。

UXDは、実際にはVaultコントラクトの担保資産に裏付けられているわけではなく、オンチェーンのデルタニュートラルポジションが裏付けとなっており、原資産の価格が変動しても安定した価値を維持できるように設計されています。

また、ペッグからの乖離があった場合に、容易に裁定取引ができる機会が存在することで、安定性がさらに強化されます。UXDが1ドル以上で取引されている場合、トレーダーは新たにUXDを作成し、プレミアムで販売することができます。UXDが1ドル以下で取引されている場合、トレーダーはUXDを原資産となる担保と交換し、その担保を利益を得て売却することができます。これにより、UXDの価格はしっかりと固定されます。

FRがプラスの場合、利回りを享受できる

ファンディングレートがプラスの場合、UXD Protocolにキャッシュフローをもたらし、様々な用途で利用することができます。

・UXDホルダーに利回りを提供する
・UXPホルダーにキャッシュフローを提供する
・保険基金の持続可能性に貢献する

UXDの保有者はUXDをプロトコルに預けることなく利回りを享受できるというメリットがあり、UXPはガバナンスとキャッシュフロー(直接還元または買い戻しによる)の恩恵を受けることができます。

UXDはデルタニュートラルのポジションをトークン化することによって鋳造しているので、UXDを保有しているだけでデルタニュートラルの金利を受け取ることができます。これは他のステーブルコインにはない優位性でもあります。

また、ファンディングレートがマイナスの場合、UXD保有者が支払わなくてもいいように、保険金がファンディングレートの支払いに充てられます。ただし、この場合はその間のUXDおよびUXP保有者の利回りはありません。市場の状況が変化し、長期的にファンディングレートがマイナスのままであれば、UXDはオンチェーンポジションの構造を変更し、マイナスのファンディングレートからのリターンを得ることができるので、市場関係なく、ホルダーに有利な状況を構築できる点は優れています。

トークンはデュアルトークン制を採用

UXD ProtocolはステーブルのUXDとネイティブガバナンストークンのUXPの2種類があります。

UXDの特徴については上述している通りなので、ここではガバナンストークンのUXPについての説明です。

UXPはガバナンス権だけでなく、プロトコルの保険基金の最後の砦として重要な役割を果たしています。保険基金が枯渇した場合、プロトコルは自動的に新しいUXPトークンを鋳造し、それをオークションにかけ、保険基金に充てることになります。

主なトークンユーティリティー

・プロトコルの決定に対する投票(ガバナンス)
・ファンディングレートの支払いによる潜在的なキャッシュフロー
(直接支払い、または買い戻し)
・プロトコル保険基金の最後の砦

特にファンディングレートがプラスだった場合、直接利益をもらうことができたり、買い戻しによる恩恵を受けることができるためUXPホルダーはFRがマイナスなのかプラスなのか都度チェックしておきましょう。

FRは様々なサイトから確認することができますが、UXDのダッシュボードでも確認できます。

また、現在はステーキングにも対応しており、ロック期間に応じてAPRが変動します。現在は14日ロックでAPR20%、30日ロックでAPR30%、90間ロックでAPR 50%なので単ステの利率で考えるとかなり良い方ですね。

CEO兼Founderの稲見建人さんはビットフライヤー出身

UXD Protocolは日本人の稲見さんという方がCEO兼Founderのプロジェクトです。

稲見さんは大学時代に経済学を学びながらポーカーやカジノでお金を稼ぎながら、大学卒業後メガバンクに就職し、その後はビットフライヤーの事業開発部で働いた経歴を持っています。

銀行を辞めてビットフライヤーに就職するまでの間は、韓国やラスベガス、ロンドン、バルセロナに行き、半年ほどカジノで稼ぎながら過ごしていたようです。

アイコンをキルアにしていることを指摘されても、一切動じることなくキルアアイコンを使い続けたり、人の神経を逆立てるような発言ばかりして界隈から良くも悪くも注目されている人物です。開発者らしからぬ言動がかなりツボで個人的に大好きな方です。

Multicoin Capital主導で300万ドルの資金調達も実施

UXD Procotolは、Multicoin Capital主導で資金調達を成功させています。

ALAMEDA RESEARCHやSOLANA財団など、錚々たる顔ぶれが並んでいます。

特に、下に個人名がありますが、この3名はそれぞれSolonaとSaberの創設者です。

ステーブルコイントリレンマを解決する世界初のステーブルコインになる

ステーブルコイントリレンマは、上記で解説した「非中央集権性」「安定性」「資本効率性」の3つのうち2つしか達成できないという仮説です。このステーブルコイントリレンマを解決できるステーブルコインこそ、このUXD Protocolになる可能性が非常に高いと言われています。

最近は日本発のプロジェクトでAstar Networkが注目を浴びており、「日本で唯一の希望の星」と言われることも多いです。

しかし、このUXD Protocolもステーブルコインの中ではかなり異色を放っており、これまで解決できないと言われていたステーブルコイントリレンマを解決できるかもしれません。CEOの稲見さんが開発者らしからぬ言動によって、プロジェクトよりも別のところにばかり注目が浴びていますが、このプロジェクトの秘めるポテンシャルは凄まじいものであると言えます。

ぜひ、このUXD Protocolにも注目してみてはいかがでしょうか。

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